1970年生まれ……この年齢になると、喪中の葉書などで親を送る友人が増えていくのを感じます。
「何年も介護や看病をした」
「あっけなかったから、もう少し心の準備が欲しかった」
今はコロナで会えない友人達ですが、後から色々話を聞くことがあるかもしれません。
老いた両親とどう向き合い、どう送り出すのか。認知症や介護などの問題にも触れられている作品です。
わが母の記について
下のリンクが松竹の公式です。
わが母の記
作家井上靖の自伝小説をもとにして、2012年に制作された映画です。舞台は1960年前後。戦後の世の中の背景を描きながら、親子や家族の姿を映し出していきます。幼少期に味わった記憶を引きずる思い、母や家族に対する思いなどが交錯する主人公。そして、時間が経つにつれて変わりゆく母の姿と、戸惑いながら付き合う家族。また、関わる家族同士の思いや感情などもよく描かれている作品だと感じました。
名優の存在感
樹木希林さんと役所広司さん、それを囲む俳優陣。特に樹木希林さんの演じるおばあちゃんの存在感は、この作品を支えてくれている感じがします。物語の後半に進むに従って変わっていくおばあちゃんの様子など、「本物」なのではないかと思うほどでした。
舞台の雰囲気
背景に出てくる場所の雰囲気も作品の魅力の1つだと思います。故郷や別荘、東京の自宅なども含めて、1960年前後の「時代」を雰囲気で感じられました。時代を感じる舞台や、現在と何も変わっていない部分など、背景によってより深く思うところもあります。また、所々に散りばめられたエピソードは、戦中から戦後にかけての独特な事情によるものも多く、若い世代では即座に実感できない人も多いかもしれませんね。ただ(私もそうですが)祖父母から直接戦争の話を聞かされていた世代であれば、そういった時代の「選択」に感じるところもあるはずです。
高齢者の問題
当時から浮き彫りになっていた高齢者の問題は、現在でも続いている難しいものです。周囲の温かさにもまたホッとするものがありますね。何だかんだ言いながらも、みんなおばあちゃんの為に必死になる姿も印象的です。これからも続いていく問題とどう向き合うのか、身近なところに置き換えて見ていました。
高齢のご家族がいる人におすすめの作品
人間にはどうしても衰えていくところがある反面、若い家族には成長や変化もまたあります。老いと向き合う・成長や変化と向き合う。家族構成からしても「転換期」といえるであろう私達の世代には、とても「刺さる」作品だと思います。時代も事情も違うのは承知の上で「自分ならどう向き合うだろうか、自分ならどう接していくだろうか」と考えながら見ていくと感じるところが多くあるでしょう。そして、物語としての感動的な部分も味わいながら……観終わって満たされた気分になりました。私自身、これから両親にどう接してどう送り出すのか。そういう日ができるだけ先であって欲しいと願いつつも、考えずにいられない作品です。
価格:1,741円 |
原作は↓こちら(私も買って読もうと思っています(^^;))
価格:594円 |
「途中色々あっても、ゴールはひとつ」
役所広司さんが演じる主人公が発した言葉。
自分自身の辞書に加えておきたいと思います。