相続対策・両親の老後対策

ご両親が元気なうちに考えておきたい「将来のこと」

前回から始めた、相続・認知症対策。
今回から本格的に話題を進めていきたいと思います
(前回までの記事のリンクは下部に載せてあるので参考にして下さい)。
ここからしばらくは
ご両親が今元気な方に向けた「対策」の提案をしていきます。

筆者紹介

私は、本業で相続関係のコンサルティングもしています。相続前の段階として、相続対策や認知症対策、その前段階になる介護予防などの重要性にもよく触れています。

Taka
相談の経験も活かして
分かりやすく書いてきますので
ぜひ参考にしてください。

まず全体を眺めながら、それぞれの状況に合う対策を考えていきましょう。
ご両親が元気で、今は全く問題のない状況を、ここでは「第0段階」と呼ぶことにします。

対策を考えていく前に、「第0段階」で考えるべきことは何なのでしょうか。
あくまで持論ですが、こういうのは、まだ起きていないうちから深刻に考える必要はないと考えます。
1・何かあったときに対応できるだけの知識を持ち
2・急に何か起きたときのポイントだけ押さえ

3・あとはこれからも元気に過ごしてくれることを考える
これでいいのではないでしょうか。

幸せなうちに対策を
と、前回確かに言いましたが
幸せなうちに深刻に考え過ぎて
暗い気持ちになる必要なんてないでしょう。

そのことだけ、心の内に持って「豆知識として」読んでいただければと思います。そして(絶対に起きて欲しくはありませんが)もしものときに役立つことがあればこの記事を書いた甲斐があったということで……

それでは、今回の記事を進めます。

第0段階だった人の相談事例

突然の病気・怪我など

想像はつくかもしれませんが
突然、というパターンの中で最も多いと感じるのは
「突然倒れて」というケースです。

雑談の中で聞いていると
元々何かしらの持病を持ってみえたケースも多いですね。
こういう状況を招いた後になると
「事前に何とかしてあげられたのでは」
と後悔してみせる方も多いのですが・・実際どうでしょう。
人間60年以上生きていれば
持病のない人の方が珍しいでしょうし。

また、ご両親の年齢になると
転倒などの怪我が重症化するケースが見られます。
日頃から運動をしておけば防止できるものもありますが
運動によって怪我をするケースもあり……難しいですね。
それでも、無理のない範囲で行う運動が
健康維持に欠かせないものである点は変わりません。

認知症

「突然」でもう一つ多いのは
意外に感じるかもしれませんが、認知症です。
そして、またまた意外に感じるかもしれませんが
同居など毎日会っているほうが
気付かないパターンも多くあります。

ご両親に会うのが月に一度とかそれ以上になると
「あれ?」と違和感を覚えるような仕草などにも
毎日接しているとなかなか気付きにくいんですよね。
従って、実は徐々に始まっていた症状であっても
家族にとっては「突然の出来事」となります。

また、認知症の場合は
他人のこととなると認知されてきてはいますが
当事者となるとまだ受け入れができないケースが多いですよね。
これは別に私が
「いざとなると受け入れられない周囲」
を批判しているわけではありません。
そうではなくて、こうやって書いている私自身も
家族がそうなったときに受け入れる自信がないのです。

そこで、せめて事前に
「そう診断されても、一定の時間は困らないだけの対策はしておく」
ことが必要になります。

次から、突然起きたときに困る事例を挙げ
事例ごとに、それぞれの対策を考えてみましょう。

突然起きて困ること

突然そういうことになった場合に
せめて、他の憂いなく家族の心配や看護などに気持ちや時間を使いたいものです。
そのためには、突然起きて困ることを想定し
それぞれでできる対策を取っておくと安心ですね。

ここで大切なこととして……
対策に、教科書通りの共通の正解はありません。
それぞれの家庭、それぞれの状況によって
合うものと合わないものがあります。
いや、同じ家庭の中でも「もしものことが起きる家族」によって対策が変わる場合もあるでしょうね。ワンパターンでなく、貴方の家族ひとりひとりに合う対策を考えておきましょう。

まず、家族にもしものことがあったとき
困る事例を紹介してみます。

1・お金の問題

病気や認知症などの場合に、医療費は必ず必要になりますが
困るのは、単なる医療費の問題だけではありません。
医療費にももちろん関わることですが
いわゆる「財布を握っている」家族に
もしものことがあったら、どうでしょうか。
特に、実家で使う全財産を
一人だけの名義で銀行口座に預けているとしたら……
最悪の場合、凍結されるケースもあります。
そうなると、その人に何かがあったときは
生活するお金を引き出すこともできず
他の家族が困ってしまいます。

2・意思の問題

自分の財産をどうしたいのか
今後どうしてもらいたいのか
その辺りも、場合によっては
意思が確認できなくなってしまいます。
それが他の家族にとって受け入れられるものかどうかはさておき、意思がわからないまま財産が残るのは、何かとトラブルを招きやすいものです。

3・契約の問題

もし不動産を持っていれば
その不動産の賃貸や売買の契約を新たに結ぶことはできなくなります。
「不動産? ああ、うちには縁はないな」と思っていても
持ち家があって、登記上所有者となっている家族にもしものことがあると、今後所有権を移転する際に苦労するケースはあります。
ご両親のあと、実家にご兄弟などが引き続き居住する予定のない場合は要注意ですよ。

それぞれの対策

1・お金の問題

対策その1「お金を分けておく」
例えば、お父様名義の口座からお母様名義の口座に
数カ月分の生活費を移しておく方法です。
普通にできる対策、でしょうね。
現在、もしも家族の全財産が一人の名義の口座に入っているのであれば、やっておいていい対策だと思います。
ただ、一つだけ注意して下さい。
一年間に110万円以上のお金を移すと
一般的に、贈与税の課税対象になります。
対策として行うのであれば、数カ月乗り切るだけ移しておけばいいのではないでしょうか。それだけの期間があれば、資金の移動についても次の手が打てるようになります。

対策その2「お金のありかを把握しておく」
名義は複数でも、管理を一人に任せている場合
この対策が必要
……というか、これは対策というより
そこまで任せっきりにすること自体が……(^^;)
でも実際、いざというときにそれで困る人は多いようです。
できている人にとっては「当たり前」のことでも
意外とできていないケースも多いものですよね。
ご両親だけで住んでいる場合など、実際どうなんでしょう。
「任せっきりにしている」ご家族に、さりげなく通帳のありかを聞いてみてください。

2・意思の問題

対策その1・意思確認
一番「ゆるい」けれど、はじめの一歩として大切な段階です。
それ自体がはっきりと分からないケースは意外と多くあります。
「貴方が死んだら」なんて直球な聞き方はせずに(キャラによっては、向こうからそういう表現をしてくる方もいますが)、「将来どうしたいの?」みたいなオブラートに包んだ言い方の方が素直に意思を伝えてくれるようですね。
あとは、個人的な性格の問題などがあるので
お父様お母様の意思をうまく確認できるかどうかは
付き合いの長い貴方(やご兄弟)の手腕にかかっています(^^;)

対策その2・遺言
「ゆいごん」と聞くと、古いドラマか何かで
「家族みんな仲良く……」
と言いながら事切れる場面が思い浮かぶかもしれませんね。
それが、財産管理上の意思確認となると
「いごん」と呼ばれ、正式な手続きを経て
亡くなったあとに意思を実行できる手段となります。
ちょっと余談ですが、あくまで私の場合
相談で使うときは、どちらも「ゆいごん」と言いますね。
皆さんにとって慣れ親しんだ言葉でしょうから
(相手から「いごん」と言われるケースもあります。多少法律をかじったことのある方や、ご自身で調べてから相談に来られる方などですね。その場合はこちらも合わせます)。
特に、お金で分けられない不動産(土地や建物など)を持っている場合や、家族の関係性(仲の良し悪し)が微妙な場合などは、遺言で残しておくと安心できます。
次回、1記事まるまる遺言の話をしようと考えています。

3・契約の問題

対策その1・任意後見人(候補)
「0段階」ですからね。いきなり成年後見制度の話をしても実感はないでしょう。
ちなみに、成年後見制度は「認知症が酷くなるなどの理由で重要な判断ができなくなってしまった人を守る制度」です。
成年後見制度自体は、もう少し後に1記事(か、それ以上)かけて紹介します。
この任意後見制度は
今の段階では日常生活に問題のない人が、契約によって将来手助けが必要となった際に守ってもらえる制度です。認知症がいきなり進んだ場合にも、成年後見制度を使うまでの期間もすんなり対応できるようになります。

対策その2・家族信託
家族信託は、家族間で契約書を交わして
ご両親の資産を「管理」する制度です。
ご両親の「代わりに」資産を管理するため、突然の出来事や認知症の進行など、少々の状況の変化にはそのまま対応できます。
これはそこそこ有効といえますよね。
ただ、一定以上の資産がある人に効果がある制度なのかもしれません。
費用面ではある程度かかるので、資産管理の必要性と天秤にかける形になるでしょう。
この制度についても、また単独の記事で紹介します。

「第0段階」で必要なこと・まとめ

その1・まずは元気でいてもらうこと!
介護予防・認知症予防の脳トレや運動など
一緒になって取り組むのも良いかもしれませんね。
意外と楽しいですよ♪
その2・ご両親の体調観察を!
決して神経質になる必要はありません。
ただ、「今までより少しだけ興味を持つ」意識を持って
そっと見守ってみましょう。
もちろん、変化を見つけたときは
対策に「動く」準備は必要ですよね。
その3・備えの確認!
この記事にある「突然起きて困ること」を見て
ご両親の場合どうなのか、さらっと確認しておきましょう。
もし「これが起きたら困るな」というポイントを見つけたら
この記事や、これから紹介していくことを確認して
「最低限の備え」をしておきましょう。

次回の記事から、いよいよ具体的な内容に入ります。
次回は「遺言」のお話をするつもりです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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