相続対策・両親の老後対策

相続対策・認知症対策に有効な方法「家族信託」1

相続対策や認知症対策など、ご両親を始めとした身近な方の
老後の対策を紹介していくこのシリーズ。
資格取得のためにお休みをしていましたが、徐々に復活していきます♪

今までに書いた記事は↓こちら↓からどうぞ。

「認知症対策・相続対策シリーズ」記事リンク

今回は、家族信託についてお話をします。
「基本編」ということで、まずは概要を中心に説明していきます。

筆者紹介

私は、本業で相続関係のコンサルティングに携わっています。
相続はもちろん、その前の段階として、相続対策や認知症対策
さらにその前段階になる介護予防などの重要性にもよく触れています。

Taka
そろそろ親のことが現実味を帯びて心配になってくる世代。年末に喪中の葉書が届く機会も増えました。今はご両親とも元気という皆さんも、今回の記事でちょっと気遣ってみませんか?

家族信託ってどういうもの?

家族信託とは、家族など信頼できる人に財産を託し
その財産を管理運用してもらう制度をいいます。
家族信託は、遺言と違い「生きているうちから」現所有者の希望に沿って管理運用できる制度です。
・自分自身の財産管理や将来に不安がある場合
・両親や家族の財産管理や運用に心配が出てきた場合
・自分自身(またはご両親)が認知症になったときの対策を立てておきたい場合
上記のような場合に、家族信託を活用すると不安を取り除く手助けにできるでしょう。

意思がしっかりしているうちに財産を託す

認知症になって意思表示ができなくなると、契約行為などができなくなります。
たとえば、認知症になったご両親が施設に入るために「空き家」となる実家の土地建物を売ろうとしたとしましょう。このとき、実家の名義がご両親のままだと、名義人であるご両親の意思確認ができなければ土地建物は売れないのです。
また、銀行口座の資金の出し入れも不便になり、本人確認が必要な取引はできません。場合によっては、ご本人の資産を守るために銀行から口座を凍結されてしまう可能性もあります。
こうなってしまうと、ご本人はもちろん、ご家族もそれだけ負担が強いられます。ご本人の口座からお金を下ろせない場合、ご家族は(いずれ「遺産」として口座の資金が戻ってくるにせよ)ひとまず「自腹」で介護費用などを用意しないといけない場面も出てくるでしょう。
そこで、意思がしっかりしているうちに財産を託しておけばご家族の金銭面での一時的な負担は免れます。「贈与」では完全に権利が渡ってしまうと同時に贈与税の負担も必要になりますが、家族信託で託された「信託財産」は贈与にあたらないのも強みです。その「信託財産」をどのように管理・運用して欲しいのか、信託契約書を作成してしっかりと相手に伝えられます。
それでは、その契約書について説明していきましょう。

家族信託は「契約」

家族信託は
「財産の所有権を移転させる代わりに、信託契約書を交わしてその移転した財産の管理運用方法を取り決める」
と説明すると分かりやすいでしょうか。
所有権を移転すると「元の所有者」となって、財産を自由に管理運用できなくなるように感じるかもしれません。そこで、信託契約書を交わして信託する財産の管理運用方法を指定できます。
ただし、「契約」である限り一定の要件があります。
・契約を交わす当事者に意思能力があること
・契約を交わす以上、手続きを踏んで終了または破棄するまで効力を持つこと
などが主な要件です。
そのため、契約書を交わす時点で意思能力を持っている必要がありますよね。また、契約書もあらゆる可能性を網羅したものを用意しなければなりません。そのため、自作の契約書を作るのでなく、専門家に依頼した方がいいでしょう。

Taka
ちょっと一服しましょうか。
家族信託って、テレビで見た記憶は何となくあるけど
まだ聞き慣れないかな
Taka嫁
Taka
そうだね。でも最近相談が増えている案件なんだよ
そうなんだ。家族信託で不安面も解決してくれたらいいね
Taka嫁
Taka
それがね……残念なことに、正直なところ「手遅れ」な方が多いのが事実なんだよね。もうご両親の認知症が進んでしまっていて。
やっぱり、不便なことが実際に起きてからでないと
動かない人が多いのかな
Taka嫁
Taka
それも一因としてあるだろうね。「対策」は起きてからでは遅いっていうのは、災害とも通じるところはありそう。あとは、比較的新しい制度だから「初めて知った」という人も多いけどね
ここを見て、多くの人が興味を持ってくれたらいいね
Taka嫁

では、後半戦です。

家族信託の仕組み

後半では、家族信託の仕組みを簡単に説明します。登場人物や一般的な内容などを分かりやすく紹介していきますね。

家族信託の主な登場人物

委託者
財産を託す人のことを、委託者と呼びます。
信託する財産の「実質的所有者」と呼べる立場の人ですね。財産の管理運用について指示を出せます。
受託者
財産を任される人のことを、受託者と呼びます。
委託者に代わって所有者の立場に立つ人、という言い方が分かりやすいでしょうか。委託者のために財産を管理運用していきます。
信託監督人
財産の管理運用などがしっかり行われているか監督する立場の人です。「監督人」という偉そうな名前がついていますが、兄弟で「受託者」と「信託監督人」になってご両親の家族信託を協力して行っていくパターンもよく見られます。
受益者
信託する財産によって利益を受ける立場の人です。「自分のために」ということで、委託者が受益者を兼ねるのが一番多いパターンです。そのほか、障害を持ったご家族のお世話に必要な資金を託すなど「他の家族のために」信託契約をした場合には、該当するご家族がこの立場に当てはまります。

預ける財産は?

家族信託では、全財産を預ける必要はありません。また、性質上信託に向かない財産も存在するため、信託を具体的に考えている場合にはご相談くださいね。ここで預けた財産は名目上受託者の名義になりますので、信託する財産については慎重に選んだ方が良いでしょう。
とはいえ、全ての管理運用が心配な場合には「信託できる財産は全て信託する」というのも一つの方法です。

信託を終えたあとの財産

信託が終了する期間は、信託契約書によって定められます。老後や相続の対策として信託する場合には「委託者=受益者が亡くなったとき」を終了時期にするパターンが一般的です。
そのとき、信託した財産を一定の人に与える旨を契約書に書いておくことができます。ここで重要なのは「いったん名義を移転した受託者に自動的に名義が移るわけではない」という点です。ここで信託した財産の帰属先を決めておけば、遺言と同じような効力を持ちます。ただ、遺言とは違う部分もあるので注意しておきましょう。

遺言と同じ点、違う点

遺言は、自身の財産全ての帰属先を決めることができます。家族信託も、財産の帰属先を決められるという点では遺言と変わらない効力があります。しかし、家族信託で決められるのは「信託する財産」に関してのみです。たとえば支給された年金(年金は本人名義の口座に振り込まれるため、信託財産に直接加えられません)や、信託しなかった財産については効力が及びません。全財産について帰属先を指定しておきたいのであれば、遺言と併用するなどの方法も考えておく必要があります。

家族信託が合う人、別の方法がいい人

家族信託にも、向き不向きはあります。家族信託の制度を活用できる場合と、別の方法を使用したほうがいい場合について、ここで語ってみます。

家族信託がおすすめの人・家庭

信頼できる人(家族)がいる場合
これは「大前提」になりそうですね。信託契約書によってある程度「制御」はできるとはいえ、信頼関係が崩れると難しいところは多々出てきます。ご家族で協力して行うとき、効力が実感できる制度といえるでしょう。
財産を直系の子孫に受け継いで行ってもらいたい場合
少し例を挙げてみましょう。
代々続く事業を営んでいる家で、子どもは長男と次男の2人である場合。
ともに結婚していますが、長男夫婦には子どもがなく、次男夫婦には子どもがいます。
・事業は長男に継いでもらい、事業資金も任せたい
・次男は社会に出てそちらで地位を得ているので、事業のことで負担をかけたくない
・長男のお嫁さんはいい人だが、彼女の親族に財産が渡ることは避けたい
・次男の子が事業に興味を持ってくれているので、このまま興味を持ち続けてくれるのなら後を継いでもらいたい
つまり
長男→長男嫁(→次男)→次男の子
という形で資産を継いでいって欲しい。
この場合、遺言では二次的な部分まで賄いきれません。
そして、長男が亡くなったとき、長男に行った財産の少なくとも3分の2以上は長男のお嫁さんに行き、長男のお嫁さん名義になった財産は、亡くなった場合長男のお嫁さんの家系に回ってしまいます。だからといって、長男やお嫁さん本人に「渡さない」というのはできない。こういった場面で家族信託を使えば、ブルーの文字のように財産を移転させることができます(長くなって専門的にもなるので、ここでは方法は割愛しますね(^^;))。

別の方法も検討した方がいい人・家庭

家族間でいざこざを抱えている場合
家族信託が「有効でないこともない」部分もあり、難しいところですが……生前贈与などを考えるのも一つの方法です。贈与税や各種税金が発生しますが、「確実に名義変更できる」という利点もあります。何が正解かとなると、ご家庭の細かな事情によって変わってくる部分も多いため、専門家に相談した方がいいかもしれませんね。
認知症の症状が進んでしまっている場合
この場合は、家族信託「しない方がいい」ではなく「できない」と言わざるを得ないパターンです。ご両親の財産管理に不安があるのであれば、成年後見制度を活用する方法一択ではないでしょうか。成年後見制度は、個人の財産を守るうえでは有効な制度です。ただ、「あくまで個人の財産を守ることが目的」のため、代わって売買や資産運用、相続税対策などを行うことはできません(あ、断言しちゃった……ドキドキ)

今回は家族信託のことを紹介してみました。
言い足りなかったことや、誤解を招きそうな表現などが見つかった場合、ちょくちょく書き換えるかもしれません(^^;)
次回は、家族信託の中身について、もう少し詳しく書いていければと思っています。

すみませ~ん! 相談があるのですが
Taka娘
Taka
はい、何でしょうか?
私の父親がずっとボケているんですが、家族信託できそうですか??
Taka娘
Taka
貴方のお父さんは、この通り大変元気ですよ。(あ、劇場風に演じてくれているのね)なるほど、そのお父さんはどんな状態ですか?
色んなことをやりかけで置いてあってお母さんに叱られているし、「アレってどうなっているんだっけ?」とか「アレ」ばっかり言って「分からない」ってお母さんに呆れられているし
Taka娘
Taka
(まるっきり俺のことじゃないか……)
あっ、やっぱ大丈夫で~す♪
預かる財産なんてお父さん持ってなかったわ♪
Taka娘
こらっ! 本当のこと言うのはやめなさい!
Taka嫁
はぁ~い
Taka娘
Taka
……

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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