副業・ライター 旅行スポット

松平郷とサンバと将軍様~3000文字チャレンジ「好きな場所」~

前日まで降っていた雨は止み、一面に青い空が広がっている。
ゴールデンウィーク真っ只中の今日は
名古屋市内でひとつ用事をこなしたあと
久しぶりにドライブに行こうと思っている。

行き先は
私の好きな場所の一つ、愛知県豊田市の松平郷。
歴史と自然が好きな私にとって
松平郷は「大好物」な場所だ。

さて
松平と聞くと、何をイメージするだろうか。
徳川・葵の紋あたりをイメージしたコアな方は
ぜひ今回の話にお供いただきたい。
そして、残念ではあるが
サンバや白馬に乗った将軍をイメージした方は
今回の話に接点はないかもしれない。

松平郷は
名古屋から下道で車を走らせ、1時間程の場所にある。
江戸時代を支えた徳川将軍家の先祖である
松平家ゆかりの地とされている地域だ。

ちょっと待って。
先程の発言を訂正させて頂きたい。
「まつだいらけ」と入力して
予測変換候補の一番目でサンバや暴れん坊将軍のテーマ曲が流れてきた私も
これらをイメージした方と同じ……接点はあるかもしれない。
キラキラの衣装を着て踊りながら
または白馬に跨り暴れながら
今回の話について来ていただければ幸いである。

話を戻そう。
江戸幕府の初代将軍・徳川家康は、元々は松平姓であった。
知られたところでは、元信(タニシゲではない←誰も聞いていない)・元康・家康と名を変え、家康になってから徳川姓を名乗ったとされている。

そんな松平家ゆかりの地・かつ私の好きな場所、松平郷。

何があるのか。

 

正直に言う。

 

何もない。

 

それがいいのだ。

何百年前も同じ姿だったのではないかーー
そう思わせてくれる原風景
その中で佇む、数々の旧跡
少なくとも、三十代に差しかかって以降の私は
こういった場所に魅力を感じるのだ。

松平郷に行くのは、実は15年ぶりくらいではなかろうか。
まだ歩き始めの娘を連れて、訪れた記憶。
15年経ち
あの頃片言しか喋れなかった娘は
言葉を覚え
よく喋るようになり
そして(父親に対しては)何も喋らなくなった。
あれ?
視界が滲んでいては出かけられない。
涙を拭って、15年ぶりの道を走っていこう。

名古屋市内から国道153号を豊田市方面に走る。
市街地を抜け、やがて自治体が変わり、周辺の視界が開けてきた。
車の街・豊田市に入る。
やはり交通量はそれなりに多い。
ただ、「世界のトヨタ」の通勤路として、この道は平日の方が混んでいるイメージが強い。
豊田市の中心部を抜け、国道301号に入ると、左手に豊田スタジアムが見える。
スタジアムや、矢作川に架かる橋など、この街はデザインも独特で面白い。
そして、スタジアムを抜けると風景にも緑色の割合が増えてくる。

ちなみに
現在は高速道路や自動車専用道路も開通しているので
名古屋からであればそれを利用した方が早いだろう。
ただ、私は懐かしさも手伝って下道を選択している。

車の窓を少し開けて、高原の緑を感じながら走っていく。
……あれ?
見慣れない道。
気持ち良く走っていたら、当時はなかったバイパスを使っていたようだ。
しばらく走ると、また見覚えのある風景に戻り
左手に松平郷の看板がある場所にたどり着いた。

駐車場に車を停めて、外に一歩踏み出す。
鳥のさえずりが聞こえ、木々の香りが風に乗って出迎えてくれた。
午前10時になる少し前だっただろうか。
横手に、朝市らしきテントがひとつ。
帰りも開いていたら、覗いていこう。
ひとまず松平東照宮へと歩を進める。

東照宮の前まで来た。
ちょっと待って。
サンバ踊りながらお供いただいている方は
しばらく大人しくしていただきたい。
白馬に乗っている方も、ここでは降りてね。
ここは神聖な場所である。
祀られているのは「権現様」こと、徳川家康公。
松平東照宮は、日光や久能山など各地にある東照宮のうちの1つだ。

鳥居をくぐる前に
東照宮の堀にいる鯉達にも挨拶しておこう。
新緑の香りと、水の音。
薬機法か何か知らんが(コラ)
ここで「マイナスイオンを浴びて癒し効果抜群!」とほざいても
権現様のバチは当たらないだろう。

鳥居をくぐり、中に入っていく。
ザク、ザク。
静寂の中、石畳と砂利の上を、音を立てて歩いていく。
その感触もまた気持ちがいい。
葵の紋を拝みながら、賽銭を入れて

……

人けのない
静寂に包まれた東照宮

……あれ?

東照宮って、どうやって参拝するんだっけ。
ただ手を合わせる?
いやいや、それは仏様だ。
二礼二拍手一礼?
いやいや、それは
……いや、それでいいのか
でも、出雲だと四拍

……まあいい。
気持ちが伝わればいいのだ
(やはり「二礼二拍手一礼」が正解のようです。念のため)。

この失態は誰にも見られなかった。
こういうときにも
松平郷の「人けのなさ」は有難い。

参拝を済ませ、久しぶりの来訪をお伝えしたあと
東照宮奥の「産湯の井戸」に進む。
ザク、ザク、……
足元は砂利から土に変わり
森の中に二葉葵の群生地が姿を現す。
興奮せず、まだ静かにしていて欲しい。サンバではなくフタバである。
葵の紋のデザインは、この二葉葵が元になっている。
群生地と少し離れたところに自生している二葉葵を眺めた。
綺麗な形で、昔の人が家紋に使った理由にも頷けるものがある。
森だけでも好きだが、ただの森で終わらないのもいい。
靴音も「ザク、ザク」から「サクッ、サクッ」という音に変わっている。
この音もまた良い。

「ザクとは違うのだよ、ザクとは」

あ、すいません。
東照宮の敷地は出るので、サンバ踊りたい方はどうぞ。
白馬に乗っていただいても構いません。

次に進もう。

東照宮の敷地を出たあと
鳥のさえずりに誘われて
緑の中に吸い込まれるように、散策路に入っていった。
脇を流れる小川のせせらぎの音が心地良い。
風に揺れて葉がこすれる音もまた、街では聞けないものだ。
周辺に咲く花の名前は分からない。
しかし、この花達を遠い昔の人も見ていたのであろうと思えば
名も無き花達もより一層美しく見える
(名が無いのではない。名を知らないだけだ)。

やがて、茶屋を抜けて池へとたどり着く。
初夏を感じられる風景
池に咲くカキツバタ
透き通るような青い空
相変わらず眩しい新緑の稜線
しばらく見ていても飽きない、原風景を思わせるものだ。

池の側から続く、高月院の門。
高月院は、松平氏の菩提寺である。
高月院に入ると、先程の東照宮とはまた違った雰囲気に包まれていた。
本堂に続く道からは、ここまで通ってきた散策路が見下ろせる。
ひと言でいえば、いい景色だ。
そこまできつい上り坂を歩いてきた印象はないが
こうして見下ろすと、かなり歩いてきたことが実感として感じられ、どこか感慨深い。
眼下に新緑の松平郷を捉えながら、階段を下りて帰路につく。
帰りに、途中にある「天下茶屋」に寄ろうかと思っていたが
このご時世の影響もあってか、開店前であった。
ここも15年ぶりに訪れたかったのだが、仕方ない。
諦めて東照宮まで歩を進める。

まだまだ史跡はたくさんあるのだが
今から他の史跡を巡る体力はない
かといって、このまま帰るのも名残惜しい。
もう一度、東照宮や展示物などを見て
周辺を歩いてみた。

田んぼに張られた水
その水に映る新緑と、透き通った青空。
見上げると、一筋の飛行機雲。
江戸時代の人も、こうして飛行機雲を眺めながら田植えをしていたのだろう

……うん?

何かとてもおかしなことを口走った気がする。
作家気取りで「いいこと言ってやったぜ」と
悦に入る私の心に広がっていた青空から
カラスの鳴き声が聞こえてきた。

「アホー」

知っとるわ。
暴れたろうか(あんたも白馬に乗っていたんかい)

駐車場に戻ってきた。
朝市らしきテントは既になく
入ってくる車の台数が少しずつ増えてきた。
昼食前の散策にはいい時間だろう。

私は、家に帰ってドラゴンズ戦を見よう。
「あの」テーマ曲を登場曲にして白馬に乗って現れる
ドラゴンズの若き将軍様が、今日も活躍するかもしれない。

~・~・~・~・~・~

3000文字チャレンジは以上です。
ここからは
今回のドライブで撮影した写真を載せておきます。
なるべく話の中に入れるようにしたので
読んでいたイメージと照らし合わせていただけたらと思います。

【駐車場を降りた場所で撮った山の新緑】

【松平東照宮前の堀と鯉】

【松平東照宮】

【二葉葵群生地】

【群生地から離れ自生していた二葉葵】

【散策路と松平親氏像】

【散策路の脇を流れる小川】

【名も知らぬ……】

【名も知らぬ……その2(ツツジ科だろうという想像くらいはつく 笑)】

【高月院の傍にある池】

【高月院】

【高月院内より】

【田植えの準備が整った田】

※話のオチには使いませんでしたが
二葉葵に興味を持って
買って育てようかとアマゾンで検索をかけたら
「刺激的な女性の映像や写真集(詳細自粛)」
が数多く現れたことを紹介し
今回の3000文字チャレンジを終了させていただきます(^^;)

ドライブなどをまだ自粛されている方や
出かけられない状況にある方々の癒しになれば幸いです。

なお
マツケンサンバを踊る松平健と
白馬に乗った暴れん坊将軍と
ガンダムで「ザクとは違う」と話すランバ・ラルと
暴れん坊将軍の登場曲で打席に立つドラゴンズ・石川昂弥選手の画像は
各自でご用意くださいませ。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

-副業・ライター, 旅行スポット

Copyright© 1970'sブログ , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.