この記事を書いているのが7月上旬。夏が旬の果物の美味しい季節になりました。桃、すもも、さくらんぼ……まだ旬には早いですが、巨峰なども店頭に並んでいます。
これらの果物を食べて「種を植えて育ててみたい」と思ったことはありませんか?
ここでは、いくつかの果物を種から育てている筆者が、早く芽を出す方法「休眠打破」について紹介していきます。メリットデメリットも比較しながら、休眠打破にも是非挑戦してみて下さい。
過去の記事は下のリンクからご覧下さい。 続きを見る
「家庭菜園」記事一覧
果物を種から育てると
通常、実がそのまま落ちて地中に入り、ひと冬超えて春になってようやく発芽します。また、特定の果物は親と同じ品種になる可能性がかなり低いそうです。後者はもうどうにもなりませんが、前者は多少「抗う」ことができます。それが、タイトルにある「休眠打破」です。
休眠打破とは
種を一定期間冷やして、冬が来たと「勘違い」させて早く発芽させる方法です。冬を越さないと発芽しない植物を種から育てるときに使えます。夏に実が成る果物に使うと有効なケースが多いです。
普通に種を植える場合
休眠打破の具体的なお話をする前に、普通に種を植えた場合について触れておきます。ひと冬越すまでの間、野ざらしにしておいても生命力で芽が出てくる場合もあるとは思いますが、一定以上の管理や「見守り」は必要でしょう。その期間が楽しい……とも言えますが、なかなか時間が取れないケースもあるかもしれません。そこで、休眠打破を使えば早くに発芽まで進められます。
休眠打破の良いところ
発芽までが早い
休眠打破によって、本来は冬を越して次の春まで待たなければいけない発芽が、早ければ2カ月半程で始まります。早くに発芽が見られるのは嬉しくなります。せっかちさんにもお勧め……って、せっかちさんは2か月も待てないだろうから栽培そのものに興味無さそうですね(^_^;)
来春の段階でそれなりに成長している
秋に発芽するので、春の段階で、春に発芽したものよりも一回りも二回りも大きくなり、その分強くなります。少しくらいの天候異常にも耐えてくれます。
休眠打破のリスク
いきなり冬が来る
特に寒い地域で栽培する場合は向いていないかもしれません。比較的温暖な地域でも、室内栽培やミニ温室栽培などの対策は必要でしょう。寒さに弱い果物も要注意です。育てる環境としては(もちろん育てる植物によりますが)比較的暖かい状態なら良く、暮らしているリビングに置けるのであれば大丈夫だと思います。
休眠打破の方法
種をただ冷やすだけでもいい?
休眠打破は、要は取り出した種を冷蔵庫で冷やして冬が来たと誤解させればいいわけで、ぶどうや梨などの殻に覆われていない種はそのまま冷やすだけです。ただ、種によっては冷やしただけでは発芽し辛い場合もあります。ここからは、桃など殻に覆われた種の「発芽率が高くなる、休眠打破の方法」をお伝えしていきます。
冷やす場所
冷蔵庫の野菜室の片隅とか、どうでしょうか。冷蔵庫のど真ん中では、ご家族がいたらかなり顰蹙もの……というか、さすがに捨てられても文句を言う筋合いはないですね(^_^;)
片隅で他の野菜などの邪魔にならないように冷やしておくのが一番かと思います。
冷やす方法
種をティッシュペーパーなどで包んで、霧吹きなどで湿らせてから、フリーザーパックなどのチャックつきの小さな袋に入れて保管します。
このとき、もし発芽を促す「メネデール」などの肥料があれば、湿らす水に含ませておくと良さそうです(私はそうしていますが、ない場合と発芽率など比較したことがないので断定はせずにおきます)。
カビについて
2か月冷やしておくと、カビが生えてくることも多くあります。今のところ、カビで真っ黒になっても発芽に影響した例はありません。しかしながら衛生上避けたい場合も多いでしょう。カビ対策としては、こまめに取り出して包んでいるペーパーを取り替えるしかないのかもしれません。
冷やす期間
冷やす期間は2カ月と書かれているものが多く、私もそれに従っています。実際のところは、念のためにもう10日くらい冷やしておくことが多く、少なくとも「ちょうど2か月やそれ以内」で冷蔵庫から取り出したことはありません。もし急がなければ、多少多めに冷やしておくと良いのかもしれませんね。
冷蔵庫から取り出して土に植える
取り出すと、種から芽が出てきているものもあります。もちろんその種は順調と判断できますが、芽が出ていない種も植えておけば芽が出てきます。「ダメだった」と捨ててしまわず、ひとまず植えてみて様子を見るのがお勧めです。
土について
「挿し芽種まきの土」を使っていた時期もありました。結論としては、発芽までは大差ないかなと思います。
発芽を待つ
あとは、水をやりつつ発芽を待つだけです。発芽してある程度大きくなったら植え替えて、果物によっては土などにこだわる必要がありそうですが、少なくともひと冬越すまでは植え替えなど必要のない器で育てたいですね。
休眠打破が有効そうな果物
休眠打破は、主に夏や秋に旬を迎える果物を種から育てるときに有効と考えられます。
ここで挙げている
桃・すもも・杏・さくらんぼ
夏から秋に食べて美味しい
ぶどう類・梨類・柿
思い当たるものを挙げてみましたが、まだまだありそうです。
前者は覆われた殻を割った方が発芽率は良さそうで、後者はそのまま冷やしても大丈夫そうです。挙げた中では、柿以外は発芽まで成功しています。柿ですか?……ごめんなさい、柿は個人的にあまり好きではないので……それだけの理由です(^^;)
硬い殻に覆われた種の休眠打破
ここからが、発芽率に影響すると個人的に考えている「休眠打破の方法」です。
桃やすもも、杏やさくらんぼなど、硬い殻に覆われている種は、そのまま植えてもなかなか発芽しないようです。そこで、殻に覆われた種は以下のような方法で休眠打破を行います。
殻を割って種の中身を出す
上の写真は杏の種です。
殻の割り方は、その種の大きさや形状によります。割り方は後述するとして、まず注意すべき点は2つ。
怪我に気をつけて!
ノコギリで少し指を擦ってしまったことがありますが、数日地味に痛いです。とにかく怪我に気をつけること。これが最優先事項です。
種の中身を傷つけない
これもなかなか難しいです。私がノコギリなどを使って割るのも、中身を傷つけず慎重に割りたいからです。
桃など大きな種の割り方
桃など大きな種の場合は、私は小さなノコギリとマイナスドライバーを使って割ります。
ノコギリで横に割れ目を作り、そこにマイナスドライバーを入れて回す要領で行うと、うまくいけばパカッと割れます。
あとは、地面など下が傷つかない所なら、ハンマーなどで叩き割る方法もありますね。
さくらんぼなど小さな種の割り方
私はペンチを使います。
これは特に勢いがつくと中身が傷つきやすいので要注意ですが、それよりも「ズレた」ときの怪我には本当に気をつけてください。
やはり、ハンマーで割るか大きなペンチを使うかした方が安全に割れるかもしれません。ハンマーを使う場合は、下が傷つかない場所で行ってくださいね。
種を湿らせて、冷やす
まずはキッチンペーパーなどで包み、水で湿らせます。
湿らせ具合は水が滴らない程度が良さそうです。水分が多すぎると良くないかも知れないので、私は迷ったら水分を少なめにしておきますね。
その後、フリーザーパックなどに入れてチャックをして冷蔵庫で冷やしたら、あとはひたすら2カ月待つだけです。
休眠打破の疑問点
何故種の中身を取り出すのか
発芽した芽が殻を破るのは大変だろう、というのももちろんありますが、一番の目的は別のところにあると考えています。
中身を出すと、その形状など個体差が大きいのが分かります。中身の成長が不十分だったり初めから傷んでいたりするものも多く、そのような個体は最初から発芽する可能性はゼロです。
「育てる種を選ぶ」というのが、私が種を割る理由です。
薄皮を剥く?
種の中身を取り出したあと、さらに薄皮を剥くと良い、という情報も多くあります。これについては私は検証していません。私は薄皮はそのままの状態で冷やしますが、そこに明確な主義があるわけではなく、単純に「面倒臭い」からです(ぉぃ)。
ただ、今のところ薄皮があってもしっかり発芽してくれているので、個人的には今後も薄皮を剥かずに冷やしたいと思っています。
冬を越すために
ここは発芽した後のお話です。夏に休眠打破を始めると、発芽するのは順調に進んだ場合でも晩秋あたりになるかと思います。しばらくは外でも問題なく育ってくれますが、徐々に朝晩冷えるようになり、対策が必要になってきます。
室内で育てられれば、本州地方の太平洋側であればそれで問題ないでしょう。室内でも暖房がない時間帯はかなり寒くなる地域や、室内で育てる環境がない場合は、ミニ温室を購入するのがお勧めです。
晩秋あたりになると、ホームセンターでも販売を始めます。大きさなどご自身で確かめて、庭やベランダのスペースに合った商品を購入するのが一番です。
休眠打破で早くに発芽させて、成長を見守ろう
早くに発芽させても、真冬に外で放置させなければ冬場の管理もそれほど難しくありません。早くから芽が出ると嬉しくなり、育てていくうちに情もわいてきます。
今年の夏は、食べた果物の種で休眠打破をしてみませんか?