副業・ライター

嵐の真相~3000文字チャレンジ「雨」~

また3000文字チャレンジで、ブログ復活の勢い付けを行っています(^^;)
今回も、前回に引き続き「アベ」のお話です。
前回は誇張した部分も多々ありましたが(「創作」も含んでいたし)
今回は尾ひれをつけながらも本当に「事実は記憶のまま」に書いています
(もちろん会話や細部の出来事までは覚えていないので、その辺りは「多分こんな事言っていただろうな」と作っていますが)。

「生まれ持ったもの」
という言葉、私はある程度信じています
……彼を見てきたから。
そして、それに絶望せず「どう活かす」かも大事ですよね。

それでは
「アベ」の最後のネタ、よろしければお付き合いください。
もう一度言わせてください。
最後の最後まで「事実」です(^^;)

嵐の真相


「ちょっと、アベ君!!どうしてくれるのよ、私新しい服着てきたのに……」
「いや……申し訳ない」
アベは困惑した表情を浮かべながら、その子に謝罪を入れる。
また別の日。アベはとある先輩の部屋に呼ばれて説教を受けていた。
「いやぁ、1時間も正座して疲れたよ」
アベは笑っている。
しかし、私達同級生からすると
このアベのお人好しさ加減がむしろ腹立たしい。
私もアベに向かって言ったことがある。
「お前さぁ、ひとつも悪くねえじゃん。少しは言い返せよ」
ところが。
アベはそれに対してこう返してきた。
「相手はそれで納得しないでしょ? 俺が悪者になって済むならいいじゃないか。後でネタにもなるんだし」
今考えれば、アベの方が遥かに「大人」であった。

事実、30年経った今
私はアベの話にやや尾ひれをつけて、こうしてネタにしているわけで。

……

前回は自動車学校で遭遇した救急車の話をした。
参考までに、前回の話を置いておく。

副業・ライター

行く手を遮るもの~3000文字チャレンジ「卒業」~

2021/9/12  

3000文字チャレンジ、今回は「卒業」のテーマを選びました。 先に白状します。 今回の話は8割以上の事実を元にして書いていますが 「盛った」だけでなく、創作も混じっています。 しかし、たった1割~1割 ...


ところが、アベの運の悪さはそれだけに止まらない。

〜事実は小説より奇なり〜

「漫画のストーリーにしたら出来過ぎて面白くない」
とすら言われる、メジャーリーグでの大谷選手の活躍。
それと同じように、容易には信じてもらえない事実が時には起きる。

♪君に会う日は 不思議なくらい 雨が多くて♪

雨男という言葉はアベの為にあると言われるくらい、彼が居ると雨がついて回った。
同級生全員に応援されて実現した彼の初デートは、季節外れの台風上陸に見舞われ
暴風雨の中ずぶ濡れになって帰宅する羽目になった。
もちろん(?)彼女とはそれっきり。

クリスマスソングが流れる、11月末の出来事である。

また、4年の秋に彼が企画した学部内の論文発表も雨で中止になっている。
もちろん室内で行われる予定だったのだが、当日豪雨で床上浸水して使用不能になったのだ。
学生寮の寮母さんによると「私が嫁入りしてきて20数年で記憶にない」大雨だったという。

冒頭のシーンに戻る。
あの会話は、男子寮と女子寮の仲のいい同級生10名以上で高原に出かけた際の一幕だ。
女の子に怒られていたのは、遅れて現地に到着したアベが姿を見せた直後に雨が降り出してきたからである。
ちなみに、その日は快晴の予報だったと記憶している。
私達の中に傘を持つ者は少なく、全員で濡れながら走って近くの売店に「避難」し、通り雨をやり過ごした。
もう一つのシーンは、アベが旅行に出かけた先で豪雨があり、その地方で被害が出たときのものだ。
その地方出身の先輩が「お前のせいだ」とばかりにアベを責め立てたらしい。
「雨男を自覚して行動しろと言われた」と、アベは説教の内容を語っている。

前者の女の子は笑いながら冗談半分に言っていたから、私達も一緒になって「弄った」のだが、後者は同級生として納得いかない。
該当の先輩のもとに、血の気の多い数人が抗議に向かった。
すると……先輩も予期していたのだろう。
「まあ入れ」と招き入れられ、色々話を聞いた。
「俺は、あいつの好きなコーラを出して普通に雑談のつもりで喋ってたんだけどな。でもあいつは謝るばかりで正座のままだし。足を崩せと俺は10回以上言ったんだぞ」
苦笑いを浮かべながら話す先輩。
それでもアベの「報告」通り、雨男を自覚して……という話はしたという。
「なぁ、どう思う? そりゃジンクスなんて関係ないけどさ、これだけ続いたら少しは考えないか?」
じゃあアベはもう旅行できないのか
そういう反論を飲み込み、部屋を後にした。
「う〜ん、確かになぁ」
学生寮の廊下に、1人が呟いた言葉が響いた。

ある日のことである。
あれは夏休みだったか。
前年卒業したOBの先輩(マサ先輩、としよう)が、私達の集まっていた部屋に現れた。
「よぉ、久しぶりだな」
「あっ、マサ先輩! お久しぶりです! いつ来られたんですか?」
「来たばっかりだよ。社会人になったら休みもなかなか取れねえしな」
マサ先輩は確か、地元の農協に就職したはずだった。
もうその頃「JA」だったのか、まだ「農協」だったのか、その辺りの記憶は怪しい。
「なぁ、数日アベを貸してくれないか?」
私達は顔を見合わせた。
アベは私達の所有物ではない。
「はぁ……」
「アベが大丈夫なら、いいんじゃないっすか?」
「そうか、悪いな」
そう言い残し、マサ先輩は去っていった。

それから数日、私達はアベの姿を見なかった。

「なぁ、アベってさぁ」
同級生が食堂で集まったとき、私はその所在を聞こうと切り出した。
全員同じ疑問を抱いていたのだろう。
誰か知ってるか……とばかりに、全員がそれぞれの顔を見合わせた。
そのとき、食堂のテレビでは、干上がったダムの様子が映し出されていた。
「水不足だってな」
「アベの力で何とかならんのか?」
「そんなこと出来たら、あいつ神様やで、ホンマ」
あれ?
あのダムの場所って……
しかし、確証の持てなかった私は黙って映像を見つめていた。
……
「ああもう、肝心なところでは役に立たねえ奴だな」
1週間後、マサ先輩が呟きながら、また私達の「溜まり場」になっていた部屋に現れた。
「アベを貸してくれて、ありがとうな! これ、地元の名物を買ってきたからみんなで食べてくれ」
「ありがとうございます!!」
礼は言ったものの……繰り返すが、アベは私達の所有物ではない。
マサ先輩はただお土産だけを置き、部屋を出て行った。
恐らく、まだ卒業せずに寮にいる仲の良い先輩の部屋に行ったのだろう。
それからしばらくして、アベが部屋に現れた。
「アベ、おかえり!」
「ただいま」
アベはにこやかな表情を見せ、マサ先輩の地元での歓迎ぶりを報告してくれた。
「で、アベは何で呼ばれたの?」
いや、もうこの時点で質問した奴以外は全員答えを知っていただろう。
しかし、律儀なアベは丁寧に答える。
「マサ先輩の地元で、知っている雨男を連れてこいという話になって……でもダメだった。悪いことしちゃったな」
水不足が深刻化していた、マサ先輩の地元。
あの日に見た、干上がったダムの近くだ。
そこに招待された雨男。
「しかし」というべきか「当然」というべきか
アベが滞在した期間、ずっとカンカン照りだったらしい。
「この時代に雨乞いかよ」
「雨乞いて 笑」
「雨乞いとやってること変わらんだろ」
「悪いことしたとか……アベ、お前もどこまでお人好しなんだよ」
「酒のつまみ」になったネタ話に
時には笑い、時には本気でアベのお人好しぶりをたしなめ……
しばらくすると、またマサ先輩が部屋に駆け込んできた。

「アベ!! お前やっぱりすげえな!!」
マサ先輩が、当時の最先端「ポケベル」を握ったまま興奮している。
地元で雨が降ったと連絡があったそうだ。

いやいや待てぃ。

もうアベはここにいるではないか。
それならその雨はアベの力ではなく、降るべきタイミングだっただけで

……私は元来顔に出やすいタイプの人間だ。
(Taka、落ち着け)
私が口を開こうとしたタイミングで、目で、手で、数人がそれを制した。
確かに、言わんとすることは理解した。

〜いいじゃないか、アベのお陰ということにしておけば〜

それから卒業するまで、アベの所にはマサ先輩の地元から度々名産が届けられた。
そして、毎回その品は我々の溜まり場に持ち込まれ、恩恵を受けることとなる。
「俺、何にもしていないのに」
アベはいつもそう言っていた。
いやいや、それはアベの人柄が為せる「技」のひとつだったと、私は今でも思っている。
〜・〜・〜
卒業して10年以上経ったとき。
同期全員が仲の良かった私達は毎年「同期旅行」と称して旅行をしていたのだが
就職して記者になったアベは仕事の休みが合わず、しばらく参加できずにいた。

「今年は行けそうだよ!」
久しぶりにアベが参加した同期旅行は
外に出ることもなく、ひたすら飲み明かして思い出話を語る場となった。

学生時代の「溜まり場」が再現された、旅館の一室。

度々起きる、爆笑の渦。

 

「ごめん、申し訳ない」

「もう許さん 笑」

「お前、ここまできたら絶対わざとやろ 笑」

 

 

 

 

窓の外は、季節外れの台風で暴風雨に見舞われていた。

 

ちょっとちょっと、また作り話っぽいよね
Taka娘
Taka
いや、今度は最後まで本当なんだってば。同期旅行も……まあ、直撃ではなかったんだけど酷い天気で。
それにしても凄い人ね
Taka嫁
Taka
さすが我が妻、信じてくれるんだね♪
いや、別に。話が面白ければどっちでもいいから
Taka嫁
確かに
Taka娘
Taka
お前ら……
Taka
あ、そうそう。〇〇(「アベ」の本名)とラインしたんだけどね。救急車の話、少し聞けたよ
あら。新事実?
Taka嫁
Taka
というかね……「3回遭遇」というのもちょっと違っていた
それじゃあ完全に「嘘」じゃない
Taka嫁
Taka
う~ん……
真相はね。
1回目は本当に遭遇して脱輪した
2回目は救急車が来たと思って急ハンドルを切って脱輪したけれど、どうやら空耳だった
卒業検定の時は音が聞こえただけで、避ける必要なかったのに避けてコースアウトした
それはそれで面白い話になったんじゃないの? 笑
Taka嫁
Taka
そうかもね。普通救急車の姿を見てから動くしね 笑
ま、話が面白ければどっちでもいいんじゃない?
Taka娘
Taka
え?
Taka嫁
それ、さっき私が言ったセリフ……

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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